センシ変えるべき理論と室伏のハマロビクスの類似性

ゲーム業界には、センシを固定した方が良いという派閥と、センシはコロコロ変えるべきという派閥があり、現在、プロからアマまで多くのプレイヤーが前者に属する。

固定した方がいいというのは、一つの使い慣れたものをずっと使い続ける方がうまくなるに決まってるというシンプルな発想だが、私は他の分野で得た色々な知識から、これがおかしいということは3秒で気づいたので

センシはコロコロ変えた方がいい - GAAブログ

という記事を書いた。もう2年近くも前のことである。

年月は過ぎ、競技エイマーを中心に、センシをコロコロ変えた方が上達するということに経験的に気づく人が現れて、ついに、センシを変えた方がいい説についてさらに裏付けを加える人も現れた。

科学的に考えた場合、センシを変えるべき - 無駄知識の掃き溜め

そこで今回は、一見、単調に行った方が良さそうに見えるが、実はランダム性や変化を取り入れた方が安定的に向上するという、他分野における例を紹介する。

室伏のハマロビクス

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バーベルスクワットをする場合、通常は、バーベルにプレートをつけ、これを背負い、しゃがみ、立つことを繰り返すことで、筋肉に刺激を与える。しかしこの刺激というのは一定である。同じフォームと速度で行えば、常に同じ刺激が与えられることになる。上達するほど、刺激は常に一定になっていく。こうなると、脳にとっても筋肉にとっても新しい刺激とはならなくなり、成長が止まる。

この問題を解決するため室伏は、ハンマーをバーベルにぶら下げることにした。彼にとって非常に軽い100キロのバーベルに、片方ずつ7キロのハンマーをぶら下げる。これによってバーベルスクワットをしている際に、ハンマーが揺れ、そこにランダム性が加わる。これによって、常に新鮮な刺激が与えられることになり、安定して成長を続けることが出来る。

ピリオダイゼーション

筋トレによって、刺激を一定にしない方法としては、重量を上げるという方法もある。しかしこれも、いつかはなかなか上がらなくなる時が来る。そうなると、常に同じ刺激になり、さらなる成長を見込むことは難しくなる。

この問題に対してより知られた方法はピリオダイゼーションと呼ばれており、一度意図的に使用重量を下げる。例えば100キロでやっていたものを一度40キロに落とす。それから50キロ、60キロとまた少しずつ上げていく。そして、前の重量の100キロまで簡単に戻した時にはそれは「新しい刺激」になっているため、また記録が伸びるという原理である。こうやって100キロを105キロにして、105キロを110キロにしていくという感じで日進月歩で重量を伸ばしていくのが基本であり、ほぼすべてのパワーリフターやボディビルダーが取り入れているテクニックである。

乱択データ構造

コンピュータ・サイエンスの分野でも同様に、ランダム性を取り入れた手法がある。データの検索を高速に行うためのデータの並べ方として、木構造というデータ構造がある。どのくらい破壊力があるかというと、アホが書くと百万の時間がかかる検索が、20くらいの時間で出来るようになる。世の中にあるデータ検索はたぶんすべて、このような木構造を使って行われている。あらゆるシステムのバックエンドにあるデータベースなどもそうである。

しかし、ランダムに入力されてきたデータ列に対して、この木構造を保ち続けるのはかなり手間であり、大抵の場合実装も難しくなる。そこで、簡単にいうと、入力されてきたデータに対してサイコロを振り、その目に応じてランダムに格納場所を決めることによって、期待値的に理想的な木構造を実現するというとんちのような手法がある。これがざっくりいうと乱択データ構造である。直感的な理解でいうと、ランダムなデータ列に対してさらにランダムで迎え撃つと期待値的には整列されているように見えるという感じである。

これがセンシの話とどう類似しているかというと、センシをずっと変えなくてよいというのは、ランダムに入力されてきたデータ列をその順番で格納していくと理想的な木構造になるという「奇跡」を信じているに等しいからである。これは、筋トレの例でいうと、ただ単調に重量を上げていけば、そのまま重量が上がっていくと信じているのと同じことでもあるが、実際は、そこに変化ないしはランダム性を取り入れた方が、期待値的には最善の結果が見込めることが、他の分野ではよく知られているのである。

センシはコロコロ変えまくりなさい。

なぜ、ランダムがものごとをシンプルかということを知りたい場合は勉強するしかないです。


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